「リラ円が下がったから安く買い増ししよう」「リラとペソの両方を持てば分散になる」
こういう発想は自然です。でも、複数ポジションを持つときは、単純にロット数を足し算するだけではリスクが見えません。
この記事では、ナンピンと分散投資それぞれのリスク計算法を、具体的な数字で解説します。
【この記事でわかること】
・ナンピンをするとロスカットレートがどう変わるか
・複数通貨を持つときの合計証拠金の考え方
・「分散」になっているか「リスク増加」になっているかの見極め方
・複数ポジション管理のチェックリスト
ナンピンのリスク計算
ナンピンとは、保有ポジションが含み損になったとき、同じ方向に追加でポジションを持つことで平均取得単価を下げる手法です。
メリットは「平均建値が下がる」こと。でもデメリットは「総ポジション量が増え、さらに下落したときの損失も大きくなる」ことです。
ナンピン前後のロスカットレートの変化
口座資金50万円でリラ円を保有している例で比較します。
| ナンピン前 | ナンピン後(追加20万通貨) | |
| 保有数量 | 30万通貨 | 50万通貨 |
| 平均建値 | 3.60円 | 3.528円(改善) |
| ポジション総額 | 約108万円 | 約176万円(増加) |
| 実行レバレッジ | 2.16倍 | 3.53倍(上昇) |
| 必要証拠金(25倍) | 約43,200円 | 約70,560円(増加) |
| ロスカットレート(LC50%) | 約1.86円 | 約2.41円(上昇) |
※ 初期建値3.60円、追加建値3.42円(TRY/JPY=3.48円、口座50万円、25倍レバレッジ、LC50%で試算)
ナンピン後は平均建値が下がって「改善」した気分になりますが、ロスカットレートは2.41円に上昇しています。つまり、「ロスカットされるリスクが高まった」状態です。
ナンピンで陥りやすい罠
「平均建値が下がった = 安全になった」は誤りです。
ナンピンをするたびにポジション総額が増え、実行レバレッジが上がり、ロスカットレートも上昇します。
「何回までナンピンするか」の上限を事前に決めておくことが必須です。
ナンピンの上限を決める考え方
ナンピン上限の設定例
① 最大でも実行レバレッジ3倍以内に収まるロット数が上限
② 口座資金の50%以上を証拠金に入れない
③ ナンピンは最大2回まで(それ以上は損切りを検討)
→ この3つのうち1つでも守ることで、致命的な損失を防げます
複数通貨を持つときの証拠金計算
「リラ円とペソ円の両方を持てば分散になる」という考え方は半分正解、半分危険です。
2つの通貨は値動きが異なりますが、どちらもクロス円である以上「ドル円の影響」を同時に受けます。介入が入ればリラ円もペソ円も同時に下落します。
複数通貨保有時の合計証拠金
口座資金50万円でリラ円とペソ円を両方持つケースで計算します。
| 通貨ペア | 保有数量 | クロス円レート | ポジション総額 | 必要証拠金(25倍) |
| TRY/JPY | 20万通貨 | 3.48円 | 696,000円 | 27,840円 |
| MXN/JPY | 5万通貨 | 9.14円 | 457,000円 | 18,280円 |
| 合計 | — | — | 1,153,000円 | 46,120円 |
※ 口座資金50万円に対して実行レバレッジ:1,153,000 ÷ 500,000 = 約2.31倍
合計の実行レバレッジは約2.31倍。この場合は比較的安全な水準です。ただし、介入でドル円が15円下落した場合は両通貨が同時に約9%下落し、含み損は合計10万円を超えます。
複数通貨保有でロスカット計算ツールを使うときの注意
重要:複数通貨保有時のロスカット計算について
このサイトのロスカット計算ツールは1通貨ペアのみを想定しています。
複数通貨を保有している場合は、FX会社の取引画面で「証拠金維持率」を直接確認してください。
複数通貨の合計必要証拠金が増えるため、実際のロスカットレートは各通貨の単独計算より早く到達します。
「分散」になっているか確認する方法
複数通貨を持つことが本当の分散になっているかを確認する3つの問いがあります。
| 問い | YESなら | NOなら |
| 通貨間の値動きが異なるか? | 分散効果あり | 同じ方向に動くなら分散にならない |
| 合計実行レバレッジが3倍以内か? | 安全圏 | リスクが高すぎる |
| 介入シナリオで合計含み損を計算したか? | 備えができている | 「まさか」が来たとき対応できない |
リラ円とペソ円はどちらも「円高に弱い」通貨です。ドル円が急落すると両方同時に下がります。これは分散ではなく「同じリスクを2倍持っている」状態とも言えます。
複数ポジション管理のチェックリスト
複数ポジション保有時のチェックリスト
□ 全ポジションの合計実行レバレッジが3倍以内か
□ FX会社の取引画面で証拠金維持率を確認しているか
□ ナンピンの上限ロット数を決めているか
□ 介入シナリオ(ドル円-15円)での合計含み損を計算したか
□ 各通貨のスワップ収入合計と含み損の比較をしているか
まとめ
複数ポジションを持つときは、個別の計算だけでなく「合計のリスク」を見ることが重要です。ナンピンは平均建値を改善しますが、同時にロスカットリスクを高めます。複数通貨保有は必ずしも分散にはならず、ドル円リスクを複数倍持つことになる場合があります。
合計の実行レバレッジを計算し、FX会社の取引画面で証拠金維持率を定期的に確認する習慣をつけてください。

コメント